昔気質技術者のお小言

車、日用品、家電製品、時事問題を技術者的に

電子レンジは難しい・・・

もうここ何年もまともに勉強していないので、知らないことや忘れていることが大量にあるもんで。 ふと、電子レンジで短時間で肉を変質(熟成)させられないものかと思い立ち、調べてみました。 具体的に言うと、鶏ハムであります。 電子レンジは水分子を加熱することはもちろん理解していますが、 水分子の振動によって周囲のたんぱく質分子に化学的影響がないものかとかとか。 そしたら、1988年に学会誌に寄稿されたものが見つかった。 時代は電子レンジの過程への普及率が50%を超えようかというところ。 それによると、例えば、油でも加熱される。 ただし、大量(300gとか)でないと効率が悪いそうで。 しかし大量だと同じ重量の水よりも早く加熱される。 まあ、油でも加熱されることは料理が得意な人ならば経験的に知っているかと思いますが。 そして、氷は加熱効率が悪い。 それは電波の吸収効率(誘電損失係数という)が低いから。 そういや、以前に電子レンジで温めたものは冷めやすいのか、ということを調べたときに 「電子レンジは水分子を加熱します。ですから氷を電子レンジに入れても溶けません」 などと、氷は水が凍ったものであることを知らない輩の書き込みがあったなあ。 そして、ホントに全く知らなかったのは、 1%程度の塩水は電波の吸収効率が大きいので 食材表面に塩をふると表面が内部が加熱されにくいのだそうで。 この効果のために電子レンジでもローストビーフや牛肉のたたきが作れるのだそうな。 その他にも食材の各成分に与える電波の効果はたくさんあって、読んでいて疲れた。(←すっかりアタマが弱くなった) まあ、高周波による誘導加熱は工業のさまざまなシーンで使われているので驚くことではないのだが、そんなことすら忘れている自分の頭にガックリした・・・ で、思ったのだが、マイクロ波が食材の水以外の各成分に与える影響をすべて理解すれば、 電子レンジなんてそこいらの安いものでもかなりのことができるのではないか。 ↓そこいらの安い電子レンジの例(笑)だから、こういったオーブンだのスチームだのといった高機能製品はホントはいらないのかもしれない。
オーブン機能なんか無けりゃ無いでよいわけで。 単機能電子レンジでもローストビーフができるんだから。 だから、ホントはメーカーが単機能電子レンジに豊富な料理ソフトを添付するべきなのだ。 電子レンジにはレシピブックが添付されてはいるが、そんなものでは全然足りない。 水分を加熱することしか書かれていないし。 食材の各成分の加熱特性を紹介しつつ(これがないとイメージできない)、多種多様のレシピを例えばスマートフォンタブレットで読めるように提供したらどうだろう。 たまに、テレビで電子レンジの加熱機能のみで唐揚げを作る例が紹介されているが、その他にも豊富な種類ができるはずなのだ。 しかし家電メーカーはそんなことは絶対にしないだろう。 そんなソフトでは儲からないから。 そして単機能の製品がいくら売れても儲けは薄いから。 オーブンだのスチームだのを売った方が利益が大きいから、そっちを売りたい。 単機能品でもいろいろできることはあまり知られたくないだろう。 もしかしたら、家電メーカーの電子レンジ部門のマイクロ波加熱を理解している人なんかは、電子レンジ調理の変わった方法をどっかのレシピサイトに投稿して小銭を稼いでいるかもね。