昔気質技術者のお小言

車、日用品、家電製品、時事問題を技術者的に

研究開発部門はガストを見習え

とある番組でガストの紹介が。
外国人に日本のいろんなところの視察をさせるという体の番組だ。
いやー、ファミレスのネタにアメリカ人を連れてきちゃいかんでしょー。
アメリカの料理に比べたらガストなんか無条件で美味いに決まってんじゃん?

ま、それはそれとして。
ガストの新メニュー開発の様子が紹介されていたが・・・
試作品の調理・試食と同時に、実際に現場で調理するときの手順もその担当部署により検討されていた。
盛り付けする際のこの手順が時間がかかるからこう変えたら?とか、作業差によって見た目が変わらないように盛り付けの順番を工夫したり。

つまり、開発時に生産工程の正確さや効率化も同時に検討しているのだ。
そうすることにより、生産現場、すなわち店舗や作業者によって商品の味や見た目の違い・ばらつきが生じない。

これって製造業に最も大切なことでは?
最近のメーカーって研究開発時に生産工程まで考慮しているかね?

ここで何度も出しているネタを例にとろう。
かつての三菱のGDIエンジン。
画期的な技術ということで大々的に宣伝していたものだが・・・
実際に新車を買ってみたが・・・
なんかエンジンが不安定。特にアイドリング。
そのうちに”サービスキャンペーン”てのが来て(リコール隠し発覚前)、ECU交換。
そしたらさらに調子が悪くなった。

これから推測されるのは、エンジンをコンピュータでコントロールするのは当然だが、
エンジン特性のばらつきが大きくて一つの制御ソフトでは制御しきれない個体が出ていたのだろう。
私が買った個体はそれまでのECUで、なんとか制御できていたが、
ECUを交換されて、その個体に合わない制御値になってしまったのではないか。

すなわち、エンジンの個体のばらつきが大きい → 生産工程条件がよくない。
ばらつきが大きいエンジンをどの個体も同じ制御値で制御するのは不可能、なのだ。

そんな生産が難しいエンジンになってしまったのは研究開発部門の責任である。
開発したエンジンの特性を最もよく知っているのは研究開発部門だから。
どこの寸法変化がエンジン特性に最も影響が出るとか、検査時にどんなパラメータを測れば正確に評価できるとか、
そういったことは開発者でなければわからないのだ。

だから、GDIエンジンは、開発して、あとはこの通り作れ、と生産部門に丸投げしたのではないか。
クレームをお客様相談室に訴えても、結局三菱本社が販売店を叱るだけ、というのと同じことだ。
開発したらあとは知らん、じゃあ、均一な工業製品を生産することはできない。

実際に製造するときの管理値をきちんと出していたのか。
出していたとしてもその許容範囲はその生産技術で実現可能なものだったのか。
そういったところの技術力が三菱はなかったのではないか。(今も)

一方、ガストは開発時から現場担当者が同時に検討する
現場担当者からの意見がその場ですぐに試作品にフィードバックされる。
現場担当者はその場で調理工程のマニュアルの草案を作ってみる。

昨今のメーカーはこういったことができていますかな?
研究者は特権階級ではない
上流の部門にいるものほど油にまみれて現場を知らなければならない。
そうしないとロクな工業製品ができないのだよ。