昔気質技術者のお小言

車、日用品、家電製品、時事問題を技術者的に

デジタル化の弊害

世の中デジタル全盛、それによって人間は”基礎”を学ぶ機会を失った。
いや、おっさんの戯言ですが・・・

デジタル全盛で、と言っても、最近の若い衆はなんでもかんでもスマートフォンで、とか散々言われている話ではありませぬ。

最近、かなーーーり久しぶりに、ホントにかなーり久々に電気信号測定の現場に入った。
具体的には何年ぶりかは言えませぬ・・・

ま、はっきり言いますと、私が以前やっていたときはアナログ測定器。
デジタルオシロスコープなんてやっと”影”が出てきたという時代。
その当時のデジタル回路は処理が遅く、デジタルオシロスコープではリアルタイム測定ができなかったのだ。

ところが現代はどうだ。
デジタル処理も含めてなんでこんなに高速で処理できる?高速信号をリアルタイムでとらえられるのだ?
気分はまるでタイムスリップしてきた昔の人である。

でもまー、デジタルだろうが何だろうが測定しているのはアナログ信号である。
だからアナログ式測定器と同じ手順で測定すりゃいいのだ。
デジタル化されたことによって力任せの計算処理によってめちゃくちゃ機能が多いが、
例えばデジタルサンプリングなんて、普段の生活でCDの音源をパソコンなどデジタルメモリにコピーすることでもやっていればイメージできる。

だから、タイムスリップ元の時代できちんと勉強していれば現代にいきなり来たとしても大したことはない。
え?こんな機能まで!?と少々びっくりするだけである(笑)

ところが。
現代人の知識の貧弱なこと・・・

オシロスコープなんて電気測定の基本中の基本。
それを知らない”博士”がゴロゴロしている。
こいつらどうやって博士号取ったのか?
論文だけ読んでいれば取れるのか?
電気関係の実験をしてこなかったのか?
材料系の研究していたって”電気”は使うだろ?
学生なら仕方がないが、”博士”だからなー。

電気信号をオシロスコープで可視化するには、横軸の時間を調整して縦軸がディスプレイに収まるように調整して・・・、
なのだが、そんなイメージすら持っていない。
つまり”波”の一つの表現方法である、横軸に時間を取って縦軸に強度、というプロットをすることが”イメージ”できていないのだ。
実際にそういうグラフを自分で描いたことがないのだ。

こういうことって、”デジタル”の弊害なのではないか。
基本的なことが分からなくてもデジタル測定器が勝手に計算してそれっぽい結果を出してくれる。
中身は完全にブラックボックス
アナログ測定器ならば入力をきちんと見積もって内部でどういう処理がなされているかを理解していないと表示すらできない。
デジタルはテキトーやっとけば何とかなる(場合が多い)。

デジタル処理全盛の昨今は”直接”に近い形で電気信号を扱うことが少ない。
だから基本の基礎を理解できていない技術者や博士がゴロゴロゴロ・・・
もちろんこれはオシロスコープだけの問題ではない。

こんなご時世だから、せめて大学の学生実験などではアナログ式の測定器を使うべきなのではないか。
オシロスコープであればディスプレイ表示ではなくブラウン管で表示するタイプで!
ブラウン管だからX軸Y軸のイメージがつかめるのだ。

そうしないと現代人は基本を理解できない(人が多い)。
現代のデジタル技術なんて、その高度化のためにはアナログ技術の発達が必要なのにねえ・・・

以上、ま、年寄りの戯言ですわい・・・